
たつの市の龍野公園を歩いていると、ふと目の前に石段が現れ、苔むした庭園と池に浮かぶような茶室が姿を見せます。そこが「聚遠亭(しゅうえんてい)」です。
「播磨の小京都」と呼ばれるたつの市の中でも、聚遠亭はとりわけ歴史と風情が濃い場所。龍野藩主・脇坂家の上屋敷跡に広がるこの庭園は、紅葉の名所としても知られ、春は桜、秋は錦に染まるカエデが訪れる人の目を楽しませてくれます。
聚遠亭を散策した動画
まずは実際に聚遠亭を歩いてみた動画をご覧ください。庭園の佇まいや、心字池に映る茶室の美しさが伝わると思います。
聚遠亭ってどんなところ?

聚遠亭は、兵庫県たつの市の鶏籠山(けいろうさん)西麓に広がる龍野公園の中に位置する、歴史的建造物と庭園の総称です。
龍野藩主・脇坂氏の上屋敷跡にある歴史的建造物および庭園で、たつの市の鶏籠山西麓に広がる龍野公園内に位置し、紅葉の名所として名高い場所です。
播磨国・龍野藩を約200年間治めた藩主・脇坂家が上屋敷をかまえた場所に残る庭園で、たつの市指定文化財・史跡に指定されています。
一見すると整備された都市公園のようにも見えますが、広く立派な石段を上ると、由緒ある茶室と屋敷、高台からの眺望、そして苔と紅葉の美しい庭が広がります。兵庫県内でも屈指の庭園といって差し支えないでしょう。
聚遠亭という名前の由来

庭園から龍野城の城下町越しに淡路島や瀬戸内海の島々を望める眺めの素晴らしさから、当地を「聚遠の門」と呼んだことが名称の由来です。その故事から浮堂は「聚遠亭」と命名されました。
松平定信が来遊したとき、ここからの眺望絶佳をたたえて「聚遠の門」と呼んでからいつの頃か「聚遠亭」と名づけられたと伝わっています。
遠くを聚(あつ)める亭。その名の通り、晴れた日には瀬戸内海まで見渡せる絶景が、この場所の最大の魅力のひとつです。
聚遠亭の見どころ、3つの建物
聚遠亭には、それぞれ個性ある3つの建物があります。
茶室(浮堂)

茶室は安政年間、龍野藩主・脇坂安宅公が京都所司代の職にあって御所が炎上した際、その復興に功績があったとして孝明天皇から茶室を賜り、心字池上に浮堂として移築したものと伝えられています。庭園・池・杉垣などと調和した、桃山時代の書院造を模した風雅な数寄屋風の建築物です。
池の上にそっと浮かぶように建つ茶室は、まるで絵画の中の一場面のよう。龍野市有形文化財にも指定されています。
楽庵(らくあん)
「楽庵」は昭和58年、ヒガシマル醤油株式会社の寄贈により、利休居士十五世・裏千家鵬雲斎千宗室御家元の御指導と御命名を頂き完成しました。間取りは八畳・六畳の広間と四畳の鞘の間を持つ本格的な広間の茶室です。
たつの市がうすくち醤油の産地であることを思えば、ヒガシマル醤油が寄贈したという事実もまた、この街の歴史の重みを感じさせます。土日(1月・8月を除く)には一般の方も利用できる茶席が設けられます。
御涼所(おすずみしょ)
「御涼所」は藩主脇坂家の御涼所で、質素勤倹の風のなかにも雅味のある接客・居住部門などの間取りや意匠と構造に特徴があり、また床下の抜け穴等にも当時の面影を残しています。
御涼所は藩主脇坂氏の別邸(奥向の建物)で、男子禁制であったとされています。床下には「抜け穴」が設けられていますが、実際どこまで通じていたのかは不明です。
「抜け穴」の存在は、当時の生活のリアルな痕跡として見学者の想像力をかきたてます。
心字池と苔の庭を歩く
聚遠亭の庭の中心にあるのが「心字池(しんじいけ)」。上から見ると草書体の「心」の字に見えることから、この名前がついています。
池のほとりには美しい苔が広がり、手入れが行き届いた庭は訪れるたびに清々しい気持ちにさせてくれます。茶室や四阿(あずまや)を結ぶ池泉回遊式の造りは、金沢・兼六園にも通じる風格があります。
三木露風と井原西鶴の碑

茶室前の池のほとりには、龍野が生んだ詩人・三木露風の「ふるさとの」詩碑や、井原西鶴の句碑等が建っています。
「赤とんぼ」の作詞で知られる三木露風はたつの市出身。聚遠亭に立てられた詩碑を前にすると、この街が文学の薫りとともにあることを実感します。
紅葉シーズンの聚遠亭
鶏籠山の山裾にある紅葉谷は、木漏れ日も通さないほどカエデが茂り、神秘的な雰囲気が漂います。紅葉谷から坂を上りきると両見坂があり、ここから近畿自然歩道を散策できます。
聚遠亭周辺の紅葉は例年11月中旬〜下旬が見頃。赤や黄に染まったカエデが苔の緑と対比して、息をのむような美しさを生み出します。紅葉の季節は訪問者も増えるため、平日の午前中が比較的ゆっくり楽しめておすすめです。
春の桜シーズンもおすすめ

聚遠亭が位置する龍野公園は、春の桜の名所としても広く知られています。公園内の桜は「一目三千本」といわれ、春にはさくら祭の会場となり、市民の憩いの場となっています。
桜と茶室の組み合わせは、春ならではの特別な景色。城下町の白壁と薄紅色の花びらが溶け合う風景を、ぜひ一度体験してみてください。
アクセス・開館時間・料金
所在地 〒679-4170 兵庫県たつの市龍野町中霞城6
開館時間 午前9時〜午後4時30分
休館日 毎週月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始(12月29日〜1月3日)
入場料 無料(庭園・外観の見学は自由) 建物内を利用する場合は事前に使用許可申請が必要。 申し込み先:たつの市都市計画課 TEL:0791-64-3164
アクセス(電車) JR姫新線「本竜野駅」下車 → 徒歩約25分(駅前にレンタサイクルあり) JR姫路駅より路線バス「龍野」バス停下車 → 徒歩約15分
アクセス(車) 山陽道「龍野IC」より約10分
よくある質問
Q. 聚遠亭はどう読みますか?
A. 「しゅうえんてい」と読みます。「遠くを集める亭」という意味で、眺望の素晴らしさからついた名前です。
Q. 聚遠亭の茶席はいつ利用できますか?
A. 土曜・日曜(1月と8月を除く)に茶席が設けられており、どなたでも利用できます。茶室の利用(貸切)は事前申請が必要です。
Q. 聚遠亭の紅葉の見頃はいつですか?
A. 例年11月中旬〜下旬が見頃です。たつの市観光協会の公式サイトやたつの市のホームページで最新の紅葉情報が確認できます。
Q. 近くに駐車場はありますか?
A. 龍野公園内および周辺に市営・無料駐車場があります。紅葉・桜シーズンは混雑するため、早めの到着をおすすめします。
Q. 龍野城と一緒に観光できますか?
A. はい。聚遠亭は龍野公園内にあり、山麓の復元龍野城、白壁の武家屋敷エリア、童謡の小径などとあわせて散策できます。全体で2〜3時間ほどのコースが楽しめます。
まとめ
たつの市の聚遠亭(しゅうえんてい)は、藩主の上屋敷跡に残る茶室・庭園・建造物の総称で、「播磨の小京都」を訪れる際にぜひ立ち寄ってほしいスポットのひとつです。
心字池に浮かぶ茶室、苔の庭、瀬戸内海まで見晴らす眺め、そして三木露風の詩碑——。そのすべてが「ここに来てよかった」と思わせてくれる場所です。
大阪・神戸・姫路からもアクセスしやすいたつの市。日帰り旅行の目的地として、ぜひ候補に加えてみてください。